尾野真千子が上手い。クリスチャンゆえに罪も罪人も憎めない。それどころか、婚約者には裏切られ、夫とのあいだには断絶さえ感じ、唯一心を許せるのが淳なのだ。しかし、彼には触れることもできず、その命の期限は確実に近づいている。淳を愛してしまう薫の覚悟と葛藤と純潔を、薫になり切って表わす芝居はみごとだ。
とにかく静かな映画だ。固定カメラで構図に凝った映像に主人公2人の独白によって、物語は淡々とすすんでいく。それでも飽きさせないのは、映像のクオリティの高さだろう。撮影班がいい仕事をしている。ピアノ1台で過不足なく添えられる音楽も素晴らしい。作家が撮ると奇をてらった表現が映画を台無しにしがちだが、詩人が撮るとこうも静謐な映画になるのかと唸らせる、実に詩的な佳作だと思う。
ただし、ラスト15分までは。
気持ちと時間は同じ。しかし、場所を隔てて結ばれる情交は無理がある。思い切りブルーの色調に振って、2人の情欲の昂揚に統一感を出そうとしているのは分かる。フィルムをブルーにするのなら、いっそブルーフィルムばりの激しいクライマックスにしてもよかったのでは? もちろん理想は直接の「まぐわい」だ。トリックは蒔田光治か伊坂幸太郎あたりにお願いして。
この濡れ場とエンディングだけに森山直太朗の歌が挿入されるのにも違和感を感じた。とくにエンディングテーマの陽気な曲調は、せっかく繊細に積み上げてきた映画をぶち壊している。どうせぶち壊すなら、ラスト15分の濡れ場そのものでやってほしかった。