いわずもがなのベストセラー。訳書の方が大衆受けしやすいのはわかるが、原文の品位は失われ、登場人物の性格描写の間違いなど愚訳の一言につきる。原作を伝えるのではなく日本語文化を通しての見方で焼き直しし過ぎである(だから売れるのか?)。これは訳者による別作品と考えるべきで、これをもって原作者を評価するのは問題がある。甘くみても翻案である。
辞書を調べれば済む語彙も面倒なのか適当にごまかしていたり、ちょっと複雑な構文になると訳すこと自体を放棄している。まるで高校生が授業でみせるこじつけ訳並み。『翻訳教室』に出てくる東大英文科の学部生の方がずっと正しく訳すだろう。
大体、The other side of midnight がなんで『真夜中は別の顔』になるのか。midnightは時間的に重要な舞台となる第二次大戦であることを理解しているのだろうか。the other sideがどういう意味で使われるか知らないのだろうか。
原著書は中身の面白さの是非は別として、語彙はそれほど難しくはないが、表現は練られたものなので、英語に少しなれた人でも味わい損なうかもしれない。読むならば原書をお勧めする。こんないい加減な訳にお金など払う必要はない。