最終巻まで読み終えて、『きんぴか』がいい!という読者のかたが多いわけがわかった。・・・やっぱりいいもの。
ちょっとじーんとくるエンタメ作品と決めてかかっていたら予想を裏切られた。えっ!うそっ!がーん!という展開ののちに、ほろ苦さ漂う結末に・・・・・・
思うに、3人の過ごした夢の砦は、巨悪を倒すための拠点ではなかった。そもそもこんな今時希少な筋の通った男たち、世間の枠に収まりきらない男たちが、ひとつところに止まっていられようはずがないのだ。夢の砦は、躓いた男たちが友情という心地よい毛布にくるまれてしばし羽を休める場所であり、それまでの出来事に決着をつけ、自分を見つめ、次なる場所へ向かうためのジャンピングボードだったのである。砦を後にする3人に、輝かしい未来が約束されているわけではない。それでも一歩を踏み出さなければならない、そういう宿命を背負った男たちなのだった。
それにしても、元大蔵官僚・広橋に次の一歩を踏み出す決心をさせた事件は重かった。その分、彼はまわりまわって引き継がれた「勇気」を糧に、精一杯のことをしなければならない。3人を巡り合わせてくれた退職刑事・向井のためにも・・・・・ 今は、それぞれの場所で三人三様の活躍をしていることを祈りたい。
一巻のレビューで、本書について「浅田氏のエンタメ作品の原点」と書いたが訂正する。『きんぴか』は、のちに繰り返し描かれるモチーフが点在する、浅田氏すべての作品に通じる物語なのだと。