フィジーを南の島の観光地、ぐらいにしか知らなかったが、こうもややこしい背景のある国だとは思わなかった。もともとのフィジー人と、インド系移民が混載する国家。その二つの種族の根本的な価値観から食い違う思想や観念。しかしそれが共存している小さな島国・・・。世界にはいろんな国があるなあ、と勉強になった。
さて物語はフィジーに住む種族の違う4人の若者が中心。彼らの友情や愛情などがフィジーに起きたクーデターを背景に描かれている。私はその中でも純粋なフィジー人のチョネに好感を持った。彼の無償の優しさや、人を気遣う心は、自分の保身ばかりを考えてしまう現代の日本人が忘れているものだ。日本人のヨシとアコが彼に惹かれるのも当然に思う。ただし、ストーリー自体は大して盛り上がらなかったなあ・・。この著者は、あの「ワイルドソウル」の作者である。あの作品で見せた圧倒的な臨場感、緊迫感、スピード感、などはほとんど今作では感じられなかった。著者も、全く別のものとして書いただろうから、比べるのは本来おかしいのかも知れない。しかし私がこの作品を手にしたのは、「ワイルドソウル」の著者の最新刊だからである。そういう理由で読んだので、少し肩透かしを食らった。
決して悪い作品ではない。良作だ。しかし名作とは言えないと感じた。