昭和40年、千葉県安房小湊での一夏の出来事。
ある夜、「金御殿」と呼ばれる邸である人物が殺され、翌朝左腕を切断された状態で発見される。
同時に別の場所で発見されたもう1つの死体には、金粉が掛けられていた。
邸に泊まっていた沢木雄一ら早稲田大学生と、地元の民宿に泊まっていた鳥居良夫ら慶応大学生が、
事件について推理をし合う。
事件から20年以上あとで書かれた、沢木と鳥居、それぞれの回顧録という形で物語は進みますが、
開始から1/3の時点まで、事件らしい事件は起きません。
このあたりは金御殿の主の娘、三島ゆかりという若き美人女優への、淡い想いを綴った青春小説として読ませます。
事件については、左腕切断の理由や、事件当時庭に放されていたはずの番犬が鳴かなかった理由、
犯人が使ったトリックなど、特に驚くようなものではありません。
またサブタイトルが「推理早慶戦」であるにも関わらず、推理と推理がぶつかるような熱い展開を期待してしまうと
肩透かしを食らうのも難。
しかし「犯人はそもそもなぜ殺しなどしたのか」という、その動機には驚かされました。
その伏線がかなり早い段階から張られているのは高ポイントでしょう。
ラストの、鳥居から沢木への追申が、青春小説として相応しい締めとなっているのもよかった。
しかしはっきり言って梶龍雄という作家への信頼感がないと、事件の起こらない前半を読むのは辛いでしょうし、
ひいき目に見ても本格ミステリとしては傑作・秀作の部類ではないので、お薦めはしづらいです。
この作家には他にいくらでも良い作品があるので、まずはそちらで梶龍雄作品を好きになってから読むのがいいでしょう。