現代日本の子育てをめぐる、様々な誤解から生まれた歪みを、マクロとミクロの両面から解き明かした上で、やさしく手当てしてくれるような本です。
マクロは、戦後にどのようにして伝統的な子育ての知恵がないがしろにされていったか、といういきさつが臨場感をもって解きほぐされ、ミクロは、私たちが胎児の時から、母親とどのようにかけがえのない信頼関係を育んでいくのか、というプロセスが豊富な検証例と共に語られます。
全篇を貫いているのは「無償の愛による、人間ならではの親子の絆」への全幅の信頼感です。そこには、著者が現役の小児科医師として40年間、延べ50万人の子供たちと、またその親たちと接してきたゆえの切実さが溢れています。取り上げられたエピソード中の患者親子との会話が、親戚のオジサン目線の気さくなあたたかみに満ちているのも、著者の人柄をほうふつとさせます。
出産前に、この本を手に取れた人は幸運です。胎教、産院選び、授乳、抱き方、着せ方、しつけ方などなど名解答に出会って「間違えなくてよかった」と胸をなで下ろすことでしょう。が、子育て半ばを過ぎた人が読んでも、的確な反省と軌道修正のために大いに役立つはずです。
ひるがえって、育てられた子の立場として、なぜ自分が親との関係で問題を抱えるようになってしまったか、その原点を見つける読み方もできますよ。
それから、「あとがき」はぜひ最後に読む事をお薦めします。
この「結びの章」とも言える一文を読むことで、それまでのすべての論説が、さらなる深みと立体感をもって心に迫ってきます。