原案はジョン・グリシャム、監督はロバート・アルトマン、主演はケネス・ブラナー、共演陣にロバート・ダウニーJr.、ダリル・ハンナ、ロバート・デュヴァル、トム・ベレンジャー。しかし、これだけ贅沢な布陣で挑みながら、満足のいく結果は得られていません。
まずこれは法廷スリラーではありません。弁護士が主人公ですし、法廷のシーンはわずかに登場しますが、それが物語全体の中ではあまり大きな意味をなしません。法廷における丁々発止のやりとりは全く期待できません。
またグリシャム小説をもとにした「法律事務所」「ペリカン文書」「レインメーカー」「ニューオーリンズ・トライアル」といった秀作映画と決定的に違うのは、敵の巨大さに比して主人公が時として無力なほど小さな存在であるという、少年ダビデと巨人ゴリアテという対峙の構図がこの「相続人」には欠けています。それだけに対決の昂揚感や結末に対する爽快感が味わえないのです。
そもそもジョン・グリシャムが映画のために書き下ろしたかのように宣伝していますが、これはボツになって出版されなかった彼の小説をもとにしたというのが真相です。この事実からも物語がおよそどれほどの出来かということが推し量れるでしょう。
最後に付け加えるならば、なんといっても「相続人」という邦題のつけかたはルール違反です。この物語に「相続」問題が大きくかかわっているということを、日本でこのDVDを見る人は最初から知らされてしまいます。しかし原題は「The Gingerbread Man」といって、少なくとも物語の要諦を露見させる題名ではありませんし、そもそも相続問題が登場するのは物語の終盤です。どうしてこんなネタばれする題名を日本の配給会社はつけたのでしょうか。日本でこの作品を手にする人はアメリカの観客と同じスタートラインに立てないではないですか。