まもなく劇場版も封切られる人気TVドラマ「相棒」のスピンオフ作品。劇場版予告編といってもいいプロローグからはじまりそれと時間軸を一つにする本作の主役は誰あろう、脇役陣で最もユニークで異彩を放っている鑑識課員米沢守である。
本編のノベライズは正直いまいちのデキで、元シナリオのデキが秀逸だからこそかろうじて楽しめる程度のモノでしかないんだけど、本作は間違いなく手放しでオモシロいと言える。
違いの第一はなんと言っても米沢はじめ各キャラクターへの理解と愛情だ。
例えばこんなシーンがある。
「上野に、すごい回転寿司の店があるんです。食べてから行きましょうよ」
そう問われた米沢はいったいなんと答えたか?
「すごい回転寿司の店? それはもしかして、通常の倍のスピードで皿が回っていたりするとか?」
…
ウンウン。もーね、思いっきりウンウン。
そのほかトリオ・ザ・捜一やたまきに美和子、といったおなじみの面々もしっかり顔出ししてくれる。そして全く違和感がない。やっぱしおもっくそウンウン。
そして主役コンビはエピローグになってようやく顔出し。そう、真打は最後ってワケ。わかってるゥ。
テンポがよく、実際以上に饒舌に感じさせる文体も軽妙でいい。
ストーリーの組み立てもよくできており、風変わりな鑑識課員がふとしたことから事件に深くかかわり、その技能を駆使して意外な真相に迫ってゆく筋がしっかりと語られている。話の流れを作るきっかけのエピソードなんかもとても巧みだ。そしてここが肝心なんだが、顔出ししてくるレギュラーキャラ達は事件解決の本筋にはかかわってこない。事件を追うのはあくまで米沢と本作のオリジナルキャラであるもう一人の刑事の二人なのですよ。つまり、これは米沢と米沢の「相棒」の物語としてきちんと出来上がってるんですナ。
かなりの「相棒」ファンである自分にはもはや判定しがたいが、これなら全く「相棒」世界を知らない人にも十分オススメできるLvだと感じられる。
230ページというコンパクトな分量といい、ちょっと電車で出かける際とかのお供にはうってつけの読み物に仕上がってると思うね。オススメ。