星野さんの小説を読むのは初めて(10年前の作品)。
伊坂幸太郎さんほど饒舌ではなく、小池昌代さんよりは世界の状況を反映した物語を生もうと格闘し、古川日出男さんほど自己陶酔していないという作風か。女性の描き方は大江健三郎さんを連想させる。
殺人を犯したのかもしれない日系ペルー人の青年が恋人と逃げ込んだのは、過去の愛に生きる女がつむぐ擬似家族の家。となると、中上健次さんあたりならそこから新たな旅が始まるといった展開になるだろうと思うけれど、星野さんのこの小説では物語らしい展開はない。長い、どこか非現実的な独白(こんな風に人は考えるかしら)が赤土に囲まれて孤立した家のなかで交差する。何か、小説を生もうと格闘している小説といった印象だけど、悪い感じはしない。それはたぶん、作品を通して伝わってくるある種の誠実さ、つやつやした文体の生命感が、可能性を感じさせるからだろう。
星野さんのその後の作品も読んでみよう。