佐野眞一のノンフィクションを一冊でも読んで感銘を受けたことのある人であれば、本書は迷わず「買い」である。
あれやこれやの名作ノンフィクションが書かれた「舞台裏」を著者自らが披露してくれるのだ。読者にとって、これほど贅沢な楽しみはない。
ノンフィクションを書くという行為は、人を訪ね資料を渉猟し、おぼろげな「点」と「点」を「線」に結びつけていく作業である。つまり、ノンフィクション作家は、犯罪捜査と極めて似た行為を行うのだ。ノンフィクション執筆プロセスは、ミステリーと構造的に類似している。従って、良質のノンフィクション執筆の舞台裏を聞くことは、良質なミステリを読むのに似た快感がある。
本書は、そういう悦びを惜しみなく読者に与えてくれる。
佐野眞一のノンフィクションの読者にとっては、感涙ものの本である。
なお、確かに「ノンフィクション入門」としてはレベルが高すぎて参考になりそうにない(笑)。ただ、「その道のプロ」が縦横に「我が天職」を語った書として、読む価値は十分にある。ノンフィクションを書く参考にはならないけど、「ノンフィクション作家という生き方」が率直、具体的に語られ、とても面白いのである。