ヴァランダー・シリーズのおそらく最高傑作になるでしょう。物語はディーヴァーのようにジェットコースター並のスリルとサスペンスがあるわけでもないのですが、事件そのものがもの悲しく、切々として人の心を打つのです。犯人を追うヴァランダー自身が人間の奥底で常に犯人を理解しようとするその姿に心打たれます。父親とイタリアに旅行する話では不覚にも涙がこぼれました。犯人逮捕までの警察小説ならば、単に面白いだけで終わるのですが、犯人が明かされ逮捕された後の、僅か20ページ足らずのエピローグが秀逸なのです。泣かせます。まるでこれを書くためにこれまでの物語が展開されたようにさえ思えるのです。単なる警察小説ではない心の叫びが聞こえるような小説です。