本書は共謀罪の成立を中心として、監視カメラやNシステムの設置など、官から民への監視強化という流れの強化について記されている。
本書で書かれている、共謀罪の成立に関わる過程。欧米と日本の違い、などに関しては非常に読み応えがある。それは確かである。
にも関わらず、本書について私が辛い点数しか与えないのは以下の3点を理由とする。
まず、全体を通して根拠に欠ける記述が多い、という点。全体を通して、いくつかの事実を元に「私はこう思った」「こう言う真意があるんじゃないかと思う」と言った予想段階のものが多く説得力が弱い。
次に、「官は悪、民は善」という前提への疑念。本書で言われる、「官によるコントロールに弊害、危険性が多い」事はその通りである。しかし、民は問題無い、という前提に立つのはどうなのか? 官に監視ではなく、顔役の居るコミュニティ強化で子供を守るのが良い、と言うが、その状況の根拠は何なのか? また、個人情報保護法などについて、「官は間違えないという前提で作られた」という批判は妥当にしても官の漏洩事例だけを並べて「民より官のほうが漏洩を沢山起こしている」と言いだすのはフェアとは言えない。私の感覚では「どっちもどっち」なのだが…。
最後に、著者自身も含めたメディアの責任について無自覚であること。著者は、官による監視社会化を危険視しているわけであるが、それを後押ししているのは、メディアが大いに煽っている根拠の薄い「治安悪化」報道などである。著者自身、多くのメディアに露出し、それを煽っておきながら、官だけに責任を求めるのはどうか? 「異質なもの」を「危険」と錯覚させ、「排除」へのムードを高めていることを自覚すべきだ。
耳を傾けるべき部分はあるが、問題点も非常に多いと感じる。