いわゆるマラソン本、ランニング本の類書の中でも非常に読み応えある内容です。
サブタイトルには「挫折と栄光」に「箱根駅伝」とありますが、内容的には一般的な「監督論」として優秀な正攻法的構成で、著者の真面目で真摯な姿勢がよく伝わってきます。
読み出してしばらくすると著者の筆力に深く感心させられます。読書が好きだ、と自身でいわれている通り、よくものを読んでいる、ゆえに考えの深い人だということが分かります。最後のエピローグにも「言葉の力」という節があって、走ることと言葉の関係、そして人間としての成長をいつも見据えている、そのことを著者自身が実証されています。
部員の不祥事の責任を取って辞任する迄の東洋大学監督としてのメインテーマはもちろん、自身の競技生活、社会人生活、補欠と正選手の二度のオリンピックの経験、視覚障害者の伴走、駅伝を通じての教育論、人間論・・・と、一冊にとどめるのは惜しいくらいの魅力が詰まっています。著者の人間性の深さ、広さが伝わってきます。