上野氏の「死体シリーズ」「・・・語る」「・・・生きている」「・・・知っている」はわたしをノンフィクション作品大好き人間にしてしまった名著ばかりだ。
ノンフィクションの良さは情報量の多さにある。文学作品や小説など足元にも及ばないのは当然だろう。そして監察医からみると死体は語り出したり、生きていたり、知っていたりする。その迫力たるや最近のCG映像を駆使したアクション映画さながらのものがある。
本書は「涙」という死者とその遺族の悲哀をテーマに話が構成されている、著者自身が現実に涙した内容だと思えるが、著者自身が再三語るように死者の代弁者が監察医なのだ。
死体は話したりしないが、著者の手にかかると語り始めるのだ、「わたしの悲しみをわかってください」と・・・
「死んでも名医にかかれ」「死者にも『人権』がある」は著者の名言であるが、口封じをされた死体が著者(監察医)の手によって「涙」の理由を語り出す。「死者の側からみた『医学』」がここにある。