いかにも富安氏の作品らしく、ほのぼのとした場面、コレは凄い!と言う場面がいくつもあります。児童書の場合、最初の部分で余りに子供じみた場面が続くと入り込めなくて挫折するのですが、展開が意外と早い上に描写も具体的なので大人の私でもスイスイ読めました。
この本の大きな特徴は、児童書としては珍しく「お盆」という行事を通して人の「死」や「戦争」と言うものに真正面から向き合い、生きる事の素晴らしさと死んでいった人々への「思い」を描いていることでしょう。
主人公は「なっちゃん」。田舎のおじいちゃんおばあちゃんの「ホラ話」に一喜一憂して賑やかな「お盆」の日々を過す内15日の夜となった。そして、折から姿を現わした十五夜の満月に導かれ不思議な体験をする。それは・・・戦争で死んでいった、あった事もない叔父さんとの出会いと別れ・・・。
「人間は二回死ぬ。一回目は心臓が止まったとき。二回目はみんなに忘れられたとき・・・」
叔父さんの言ったこの言葉に、お盆に皆が集まり亡くなった人々の事を思って語り合ったり祈ったりする事の「意味」があります・・・。
お話の中でも取りあげられるのですが、巻末には太平洋戦争末期に特攻隊として出撃して帰らぬ人となった、会ったこともない「叔父さん」の思い出や、戦後明らかになった最期の様子も語られます。
そして、叔父さんを「もう一度死なせたくない」という本書執筆の理由や、悲惨な戦争を忘れず、巡り来る夏がいつまでも平和であることを願う言葉で全体が締めくくられます・・・。
戦後65年以上も過ぎて戦争体験の風化が語られる昨今、1959年生まれの作者の、今の内に、忘れない内に書き留めようという熱意が感じられる作品です。子供達への読み聞かせでも良いでしょうし、少学中学年からなら自分でも読めるでしょう。もちろん大人でも・・・。