著者の専門は臨床心理学・身体心理学。
皮膚が単なるバリアでないことをいろいろな研究結果から説いて行く。まず免疫の最前線として働き、体内の恒常性の維持に重要な働きをしている。
また、皮膚は音楽や自然界の音の中の超音波成分を知覚することができ、快適性と神経活動活性化を生じさせ、一方不快な低周波も皮膚が知覚し、自然災害などから身を守ることに役立っているという。
皮膚を「なでる」ことで、脳にオキシトシンが分泌され、子供の成長を促し、リラックスさせ、愛情を深め、穏やかにし、頭を良くする効果がある。
「さする」ことには痛みや不安感を鎮める効果があり、スウェーデンのリハビリテーションプログラムに取り入れている所もある。
日本にはもともと、皮膚や皮膚感覚を大切にする文化が育まれていたが、境界を明確に分ける西洋文明の考え方の浸透により、皮膚の内側から感じる要素が消え、ただ外側から見られるものとなってしまった。
皮膚に様々な病状が映し出されると同時に、人々は解決手段として皮膚に加工を加えて行く。
しかし、皮膚の加工に頼らないコミュニケーションが今求められている。
幼少期から子供に積極的にふれあい、皮膚への刺激を絶やさないことが、社会の中で自己の感覚を保持して自尊心をもって生きることにつながるにちがいない、と著者は主張している。
皮膚から心と身体、社会との関わりを考えて行く刺激的な本だ。