戦前の皇族の動静を、新書に入る限り詳細に追った興味深い一冊。戦前の皇族は室町時代からの分流である伏見宮系が数十人いて、直宮家と拮抗する勢力だった。直宮家が天皇と極めて近いために天皇の信頼を強く受ける反面、政軍関係で影響力を行使することができなかった。これに比べ、伏見宮系は昭和期に陸海軍総長を出し、多くの部隊指揮官も出している。天皇が、暴走する軍部の統制を期待した皇族総長は、むしろ軍部側の人物として、皇族であることを利用して、軍経験のない年少の昭和天皇を優越感をもって見ることで、軍部の政治的勢力拡張に荷担してしまったようにも、見受けられる。
また、伏見宮系は直宮家と縁遠いこともあり、パリで事故死した永久王、度重なる帰国養成を無視しパリに逗留した稔彦王、宮中に金を無心した邦彦王など素行に欠けるメンバーが少なからずいた。皇室維持に男系男子の増員のため、旧皇族の復帰提案もあるが、増員してもメンバーの生活指導の管理も大変ではないかなという感じがした。
同じ中公新書「華族」の姉妹編と著者自身が述べるが、皇族の顔写真がたくさん入っているほか、外遊歴、学習歴なども一覧表になっていて、前作同様のデータ重視なのがいい。手間がかかっていて労作だと思う。新書という判型では、決定版になると思う。