先祖代々受け継がれて来た「結婚政策」の成功によって16世紀に広大な領土を得たハプスブルク家。ヨーロッパ中を駆け巡った、ときの当主カルロス皇帝は治世の晩年、全ての権力を親族に託し、侘しい寒村に建つ修道院で隠遁生活に入ります。
本書はその生活中に交わされた数々の書簡を分析し、皇帝が亡くなるまでの約3年間をまとめあげた好著です。家族の心配事に心を痛め、生活費の工面に頭を抱え、家臣との軋轢にいら立ち、日々の食事にこだわる等、ルネサンス時代最高の権力者の「人間臭い」姿を身近に感じとることができるのがとても素晴らしい。そんな日々の姿をたどりながら、なぜ強大な君主の座を降りたのか?なぜ辺境の修道院が最期の場所と定められたのか?に迫ります。
ところで、彼は生来の暴飲暴食癖と無類のビール好きがたたり、痛風の悪化によりこの世を去りましたが…タイトルの「悲劇」とは実はこのことかも?