カーの特徴は、(1)密室を中心とした不可能犯罪、(2)オカルティズム、(3)ファースの三つである。ところが本作を読んで行くとどれも見当たらない。お馴染みのH.M卿もフェル博士も出てこない。ストーリーも下手な昼メロのようだ。これがカーの代表作 ? と思いながら最後まで読んでいくと、そこには驚天動地の衝撃が待っているのだ。
こんな発想が出来るのはカーしかいないだろう。何が驚きかを説明するとトリックをばらすことになるので避けるが、とにかく読んでみて下さいとしか言えない。あのクリスティをして「さすがの私もこのトリックには脱帽した」と言わしめた、カーが持てる技巧を最大限に発揮した超傑作。
そして、真の驚きはトリックそのものでは無く、カーがある種のミステリの形式を打ち破った点にある。自身が得意とするミステリの形式を自ら打ち破ったのだから、「カーは凄い」としか言い様が無い。ミステリ・ファン必読の書。