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古代史は個々のポリスから世界帝国への統合といった推移である、とは多くの人の捉え方である。著者はあえて一都市ローマに視野をしぼり、世界を支配したポリスローマが皮肉にもその帝国の世界性ゆえ地方の一都市に成り下がる過程を強調したのだと思う。
本の冒頭から唐突にカエサルの名を出したこと、グラックス兄弟の改革から話を始めるのはまさにそういう意味で象徴的である。
他の評価でも指摘されているとおり本書にはローマの建築に関する記述が多い。これはローマの観光案内のごとく読めそうだが、そうではあるまい。先ほどの趣旨に沿えば、異教的民主制ポリスからキリスト教的世界帝国への推移の具象化とも読めるのである。記述されている建築が全て政治的、宗教的意味合いが強く、百万の民衆が住む都市として伝わるところが少ないのだ。
読者はたまに垣間見られる政治史の記述になにか距離感といったものを感じないだろうか。ネロを自殺に追い込んだのは都市ローマであろうか、ヴェスパシアヌスを皇帝にしたのは都市ローマであろうか。五賢帝は都市ローマから生まれた名君たちであろうか。バルビヌスとプピエヌス(本書では彼らを個人名で呼んでいない。)が殺されゴルディアヌス三世が即位する際の記述はまことに象徴的である(P.371~372)。
歴史のダイナミクスを一都市に凝縮した本書はまさに西洋古代史にふさわしい傑作だろう。中公新書には新書とは思えない良書が多いが、間違いなくこの本は最も高尚な1冊であると思う。
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