オペラの帰りにある夫妻に突然誘われて館に集まってきたハイソサエティの人々。使用人たちがなぜが次々と出て行き、なにやら不穏な空気が漂い始める。やがて、誰一人として館から出れなくなっていることに気がつき始めて・・・。
これだけ書くと、なにやらホラー映画の筋書きのようですが、これはルイス・ブニュエル監督による痛烈な特権階級批判の映画。不条理劇とする向きもあるようですが、何から何までが謎めいているわけではなく、ちゃんとした筋書きがあり、フィルムの意図も明確。ただ、賓客たちがなぜ館から出れなくなってしまうのかがわからないだけ。ということで、その部分はブニュエルが倒錯した超現実主義的なアプローチが成されています。
閉じ込められて、食料もつき、徐々に発狂していく賓客たち。ある者はホスト夫妻をなじり、ある者はたわごとをわめき、ある者は自らの命を絶ち、挙句の果ては生贄を捧げるべきだという意見も出る始末。鬼気迫る出演者たちの演技のアンサンブルが素晴らしい。そしてブニュエルのカメラはいつもの横這いに撫でかすめるような動きで賓客一人ひとりの必死の形相を捉えていく。実に緻密な構成に魅せられます。
不条理といっても極めてわかり易く、超現実的といってもその意図が明確な、これはそれでいて日頃は贅沢をしている市民がもしものときに見せるであろう狼狽ぶりを、なかば意地悪に赤裸々に描いた傑出した怪作です。