ご存知「妖怪馬鹿」の多田氏(文)、京極氏(画)のコンビが贈る学術的妖怪研究書。「画図百鬼夜行」で名高い「鳥山石燕」の紹介を中心とした前文に続き、42の妖怪が解説される。この中には京極氏の作品に登場する以下の妖怪も含まれる(多田氏がそれに言及している訳ではない)。「姑獲鳥」、「魍魎」、「狂骨」、「鉄鼠」、「絡新婦」、「塗仏」、「ぬっぺっぽう」、「小袖の手」、「文車妖妃」、「目目連」、「鬼一口」、「煙煙羅」、「倩兮女」、「火間虫入道」、「襟立衣」、「毛娼妓」、「川赤子」(結局「百鬼夜行「陰」全て」)、「鳴釜」、「瓶長」、「山颪」、「陰摩羅鬼」。畠中恵氏の「しゃばけ」シリーズの「白沢」も登場する。
多田氏の記述はあくまで学究的姿勢に徹しており、その探究心は凄い。妖怪以外の薀蓄も豊富。一例を引こう。「姑獲鳥」においては、その原型が「羽衣伝説(アジア共通にある)」と言ってまず読者を驚かせ、屈原なども登場させて「姑獲鳥」が中国産妖怪である事を述べる。これが日本に存在していた幽霊「産女」と混合されたと説く。更に、「子啼き爺」が「産女」の亜流である可能性を示唆する。また、裸の子供が「姑獲鳥」に狙われ易いとか衣服との関連性を強調したり(羽衣伝説との関連)、「牛鬼」との関連性を述べたりする。まさに水木先生の世界であり、妖怪ファンには堪らない。柳田国男風の民俗学的解説もある。これだけ多くの考証をしながら、妖怪は複雑系であり、その全容は解明できないと述べる。全容が解明できない点が、妖怪の妖怪たる所以と言う事は著者も読者も承知の上なのだが。
妖怪道を歩む多田氏ならではの著述である。京極氏のイラストも特筆もので、モノクロ画で妖怪達の神秘性、不気味さ、物悲しさを巧みに表現している。妖怪マニア垂涎の妖怪解説本の決定版。