今巻からぐっと頭角を現してきたのが樺島くん。老け顔の小太りでクラスのいじめられっ子だが、百舌谷さんの過激な言動を受け止められる唯一の理解者であり、弟思いのイイヤツである。
本作はわりと視点が複数の人物にバラけており主観視点の少ない作品だが、数少ないモノローグの殆どを樺島くんが担っているのは特筆して良いだろう。彼が2巻でほぼ主人公に近い位置づけとなった事により、ぐっと読みやすさが増した。
百舌谷さんは頭が良すぎ、性格が複雑すぎて感情移入しにくいし、1巻で百舌谷さんの彼氏となった竜田くんは脳味噌がかなり薄味(まあそれが本来の子供の姿だけど)なので面白味がない。やはり樺島くんが読者代表には適任だろう。
百舌谷さんと樺島くんの関係はとても微妙で、それが本作の持ち味ともなっている。一見、女王様と下僕のようにコキ使われ、いじめられているが、その実百舌谷さんは樺島くんを信頼し切っており、樺島くんも自分が居ないと百舌谷さんがダメになってしまう事を理解している。
彼女が樺島の弟・勇次郎とその看護師・珠美に近づき、ついポロッと樺島への素直な想いを吐露してしまうシーンが今巻のハイライト。ここまでずーっとギャグタッチで描いてきたからこそ、「ここぞ!」というシーンのシリアスさが胸に迫る。エピローグ的なラスト8ページは涙なしには読めなかった。
総評:笑えて泣けて、登場人物が愛おしくなる作品。これまで人間心理の暗部を描いてきた作者だからこそ、ギャグテイストの中にも一筋縄ではいかない人物像を作り上げることに成功している。流行の「萌え要素」を取り込みながら、一方で批判を忘れていないのが作者らしい。ひねくれ者の面目躍如である。
追記:勇次郎の初出時の衣装は必見です。ぶっちゃけ新しい属性に目覚めそうです。