常に矢作俊彦の著作に対して、私が感じるのは、彼の余裕である。
話の展開といい、台詞回しといい、読者より、高みから”これについてこれるかな”といった読者を試したり、
”本当にこれを理解できるのかな?”皮肉めいた姿勢を感じるのだ。
それが、嫌味にならないで、スタイリッシュで、本物感が漂うのが、彼の特徴だと思う。
さて、この本は、橘秀次郎と大槻政太郎の二人が、友人の遺言のために訪れようとしている、ネクストワールドに潜むものとは?二人が立ち上がりしたこととは?
といった、真保裕一なんかが書きそうなテーマで進む。
ハードボイルド色はまったくない。
でもおもしろい。非常にテンポがいい。
小気味よい文章がならんで、スピード感にあふれている。
また、コンセプトもいい。
ラストも泣かせるところがまたいいじゃないか。
あれ、また矢作俊彦に乗せられてしまったようだ。