「人格者としてしか語られず、人格者としてしか振る舞えないことにこそ、王が抱えている最大の問題――最大の不幸があるのではないか」。著者はその理由を探ろうと、王監督の亡父、王仕福氏の生涯を追った。中国大陸南部の貧しい農村に生まれ、1922年に故郷を捨てて来日した仕福氏は、日本社会に溶け込もうと忍耐強く働き、華僑の子として生まれた王監督ら4人の子供たちにもその努力を強いてきたという。
仕福氏は故郷について妻子にも多くを語らなかったが、著者はその地を探し出し、仕福氏が20年前に帰郷した際、密かに残した「証」を発見する。王監督さえ知らなかったその証には、親と子の深い絆が刻み込まれていた。丹念な取材が生んだ濃密なノンフィクションだ。
(日経ビジネス1999/6/14号 Copyright©日経BP社.All rights reserved.)
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