宗教都市である京都の色合いが濃く描かれています。五木寛之の小説の味わいとは異なる彼の宗教観の披露のような内容でした。当然、これを片手にここに取り上げられた京都の有名社寺を廻ってもかえって難しい顔をして拝観しそうになることでしょう。それくらい真摯で深い思索の積み重ねが本書を生んだと思っています。
歴史の観点や教義の点から見ると一般的な宗教書よりも読みやすく、実に分かりやすいものでしょう。彼の捉えた各宗教の始祖の生涯や経典や教義の意味合いを知るには、有用な書だと思いました。ことに浄土真宗に関しては、50歳の頃に、京都に移り住み、龍谷大学に聴講生として通ったほど関心があるわけで、その深い学識と得た宗教観は信念に基づいて記されています。
161ページに宗教との出会いが書かれていました。50歳の頃、片腕として働いておられた実弟を亡くされ、仕事を休んで京都に移り住んだ頃に出会ったのが蓮如であり、親鸞聖人であり、浄土真宗の根本的な教えである「本願他力」の信仰であった、と述べています。「この思想に出会って、私は自分がどのように生きていけばいいかを、少しだけ気づいたような気がした」という一節を読むだけで本書の持つ雰囲気を捉えてもらえるでしょう。
2004年に仏教伝播文化賞を受賞されたのがよく分かる内容でした。
取り上げられた金閣寺、銀閣寺、神護寺、東寺、真如堂、東本願寺、西本願寺、浄瑠璃寺、南禅寺、清水寺の9寺は説明不要の寺院であり、京都観光には外せない寺院です。京都を愛される方が再訪して、各寺の歴史やその教えの源を知ろうと思われた時に本書を手に取ると、その真意を理解されると思います。