実家が北海道の農家である漫画家・荒川弘の実体験を元にした農業エッセイ漫画の第2巻。前巻と大きく変わった部分はなく、
各話完結方式なので本巻から読まれても特に抵抗ないでしょう。頁数は110P強と少なめですが、エッセイを謳っている分一コ
マに係る解説が多く、見た目以上に読み応えがあります。それにしても農業という単一テーマからよくここまで多くのネタが出て
くることに驚いています、上京前長く農家の日々を過ごした荒川先生の脳内にはまだ眠る逸話に溢れているのでしょうか。
前巻で読者から人気を集めたという荒川先生のお父さんにつき、近隣の人々の口から各種の珍エピソードが綴られる「親父伝
説」が必読。ここで語られるお父さんが農業の為に命を張ってると言っても過言で無い位の豪快さ、逆にこの位肝っ玉がないと
農家の主は務まらないのでしょう、お見事です。
北海道がロシア領土だったら…四畳半部屋で牛を飼ったら…というもしもエピソード群は、作者の細かい知識を元に結構リアル
に検証されます。一方イモのエピソードは、私達が市場で見る整った形の作物が如何に割合として少ないかを教えられ、食事に
出てきた野菜類を無下に出来なくなりそうです。
前巻に続き感じられるのは、荒川先生含め農業を営む人達の逞しさ。前巻冒頭の繁忙期における農家のタイムチャートは「老後
は農業でスローライフを」と甘い幻想を抱いていた私を尽く打ちのめしました。そんな年中暇なしの中結束し農業を長年営んでき
た荒川家の逞しさ、北海道の厳しい自然と戦いながらも活き活きした日々が描かれます。
一方家畜動物達とのほのぼのした触れ合い、作物が実った喜びは辛くても農業を続ける理由となり得てきた掛け替えないもので
しょう。規格外の作物を消費できる農家ならではのお楽しみ等、単なる苦労話に終わらない処に先生の農業への愛情を感じます。
ちょん切る系のお話や牛の受精の話等、読みながら「痛い」と感じるエピソードもありますが、農家にとってそれらは自分達の身
の安全を確保したり作物を増やす為に必要な手段、その感覚に慣れないと農家ではやっていけないのでしょう。「鋼の錬金術師」
の怖い程に冷徹な生命の描写は、多くの動物の生死に関わってきた先生の幼少環境が多分に影響していることを実感しました。
ギャグの勢いだけでなく、作者の豊富な知識に基づく説得力でじっくり読ませる面白さは健在です、ご一読を。