カール・セーガンの全ての著作がそうであるように、この本も、科学の素晴らしさを一般向けに紹介するためだけのものではなく、人間ひとりひとりの幸福をどうやって守るか、というメッセージが込められています。
まとまった出版物としては遺作にあたるわけですが、セーガン博士は現場の科学者として世の中にアピールすることは充分にやり尽くしており、最後に言いたいことを発言したという感があります。宇宙の話というより、政治的な話が多い。「Cosmos」の頃は、冷戦の中にあって、核戦争の危機を訴えていましたが、この本では、現在の日本人も意識するようになった世界各国へのアメリカの軍事的介入などにも言及しています。オゾンホールや地球温暖化などの環境問題や宗教の問題など、従来からの鋭い問題提起もあらためて含まれています。
夫人であるアン・ドルーヤン博士との共著「妊娠中絶」の章は、生命というものの本質に迫る素晴らしい内容で、多いに啓発されます。単純な自然科学的な主張ではなく、女性の幸福について現実的に考え抜いた上での発言なので、説得力があります。
まだまだ混迷を深める時代に生きる我々としては、セーガン博士にはもっと生きて、世界への提言を行って欲しかった。
発言し行動した名科学者の勇気ある態度に喝采を送りたい。