冒頭の、伝説の鷹「からくつわ」の箇所を読んだだけで、強く美しい鷹に魅入られてしまう。
これほどの矜持と高い知能を持った生き物を、人に従わせ、しかし媚させず、野生を残したままで高度に洗練された一級の狩人に仕立て上げる醍醐味。
愛情がなくては到底なし得ないが、一方で鷹と闘う気迫がなくてはならない。
意中の鷹をこの手でとばせることができたなら一生女もいらぬと誓願を立てる鷹匠の心境が、手に取るように伝わる。
鷹匠の世界は多くの読者にとって未知の世界である。
作者は、読み手に足りない知識を過不足なく補いながら、解説を単なる解説に終わらせず、腕にのせた鷹のずっしりとした重みを読者が感じられるようになるまでひっぱってゆく。
作者の作品ではこの『白鷹伝』のほかに、やはり一つの道に命をかける男たちを描いた『火天の城』『雷神の筒』『利休にたずねよ』などを読んだが、最も澄んだ感動を覚えたのはこの『白鷹伝』だった。
鷹という生き物の持つ美しさと、主人公のただ鷹だけ、その他に欲も得もないという生き方の美しさの故だと思う。
読後感が清々しい。