本書は、荻原規子氏の手になる勾玉3部作の2番目に位置する物語で、
ヤマトタケル伝説を下敷きに幼馴染の少年・少女の成長と大和朝廷の
権力をめぐる抗争を描く長編ファンタジーです。3部作はそれぞれ
独立した物語ですので、この本から読んでも大丈夫です。(私もそう
でした)
とにかく本作はストーリーテリングを見ても、キャラクターの立たせ
方を見ても、これと言って欠点が見つからない、読み出したらとまら
ない良作です。これほどの作品が世の中にあまり喧伝されることがな
かったのは、ひとつには最初出版されたときに児童書として世に出た
からではないでしょうか。しかし、そういう枠にはおさまらない豊穣
な物語ですので、新書になったこの機に是非一読をおすすめします。
古代日本を舞台にしていると、何やら暗い話のように思われがちです
が、勝気な性格の主人公・遠子姫や、女たらしの憎めない好青年菅流
(すがる)、いまでいうツンデレ?の像子姫など、明るいキャラクタ
ーが大勢登場しますのでご心配なく。
むしろ私が感心したのは、マジックアイテム的なギミックをもった3
種の神器と少し生々しさのあるメタファーをうまく使って、各シーン
をとても印象的にしていることです。
オビの台詞も印象的でした「ひとりの手には輝の剣、ひとりの手には
闇の勾玉、神代の力を手にしたときに世界の果てに離れてしまった」
この一文ですべて表しています。
それにしてもこういった良書が新書になる、よい時代になったもので
すね。