端正なたたずまいの文章の奥の方に、遠く江戸時代の怪異の狐火がゆらめいている綺堂怪奇談。「青蛙堂鬼談」の諸篇と「異妖編」「月の夜がたり」「影を踏まれた女」を収めた岡本綺堂【怪談コレクション】の第一弾『影を踏まれた女』に続く第二弾の作品集。収録作品は、「こま犬」「水鬼(すいき)」「停車場の少女」「木曾の旅人」「西瓜(すいか)」「鴛鴦鏡(おしどりかがみ)」「鐘ヶ淵」「指輪一つ」「白髪鬼」「離魂病」「海亀」「百物語」「妖婆(ようば)」の十三篇。
特に印象に残った短篇は、「白髪鬼」「西瓜」「妖婆」「離魂病」の四つ。「白髪鬼」はラスト四行に、冷水をぶっかけられたみたいにぞっとさせられました。西瓜とあるものとがくるくると入れ替わるところが変に怖かった「西瓜」、霏霏と降り止まぬ雪の音が耳鳴りのように聞こえてきた「妖婆」、どちらもぞくぞくっとしましたね。「離魂病」は芥川龍之介が読んだら震え上がったんじゃないかっていう一種のドッペルゲンガー譚。この話の中に出てくる「自分で自分の後ろ姿を見る話」は、杉浦日向子さんの漫画『百物語』にも載っていました。
巻末に、綺堂の「半七捕物帳」の世界を殊のほか愛し、自身「なめくじ長屋捕物さわぎ」の世界を創り出した都筑道夫氏の解説と、縄田一男氏の解題を収録。