「恋のひとつでもすれば少しは女らしくなるだろう」
と女王(母親)により異世界から飛ばされてきた少女・白雪。
恋人候補として選ばれた少年・緑を見て不満たらたら。
当然ながら白雪にはこの世界の常識などなく、また
元々の過激な性格からくる言動に振り回される緑。
その他にも白雪のお目付け役として人語を操るフクロウや、
緑の妹で霊感少女の真子など存在感と魅力のあるキャラが
話を盛り上げていく。
桐原いづみ氏の稀有な点は、とにかくストーリの運びと
盛り上げ方が秀逸なところ。
この作品に限らず、主人公が悩んでいようが落ち込んでいようが、
物語自体は全く停滞することなく、見事というか他人事のように
進んでいく。だから読んでいて感情移入をさまたげないばかりか、
ストレスやもどかしさを感じる暇を与えない。
また、ここぞという場面で、口もとの描写だけでキャラの微妙な心情を
表現する卓越した技巧も相変わらず。
人物・小道具・背景などの描きこみも洗練されていて、見応えと読み応えを
高いレベルで両立している。
私のような短気でせっかちでこらえ性の無い人間だと
例えばギャルゲーなどで、路上での立ち話の場面が続くと、
「お前ら歩きながら話せないのかよ!」
と思わず突っ込んでしまうし、
朝、幼馴染が起こしに来ているのにグズグズしていると、
「いいからさっさと出かけろよ!」
と思う。そればかりか続ける気をすっかりなくして
速攻で中古屋に叩き売ってしまうことも。
桐原氏の作品ではそういうテンポの悪さは無く、より速やかに
気分良く、読者を作品の世界へと誘ってくれる。
ある意味、ありがちとも言える設定と展開のようでもあり、でも
それだけでもないだろうという予感もあり、今後が非常に楽しみ。