この本は白蟻についての本である。しかし、著者は著名な文学者であり、そのため「白蟻の異常性格についてほとんど考慮していない」自然科学者の観察に基づいて客観的事実を述べながらも、鋭い哲学的考察が随所に散りばめられて、類書に無い深い内容を持った本になっている。
白蟻は、セメント造りで空調の完備された巨大な蟻塚に住み、地下に縦横に張り巡らされた通路を行き来し、個体それぞれの役割は複雑な社会組織に応じて極度に分化され、雄と雌の性はあるものの社会化のためほとんど放棄され、次世代を生み育てる役割は個体から「巣」に奪われているのであり、それらの結果、一個体は自然界における位置を失い、全体としての巣が、自然界で一定の役割を担っているのである。
私たちも同様に、快適なタワーマンションに住み、地下鉄や地下のアーケードで暮らし、高度資本主義社会に適応するため極端なスペシャリストになり、男女平等の美名の下に性差は否定され、育児は家族から保育所等になった。
私たちは、どこに向かっているであろうか。