名門・信光学園を甲子園に導いたバッテリー・向井と真田。その二人が監督として、甲子園に帰ってきた。母校・信光学園を含めた3校の因縁対決で騒がれる中、かつての高校球児で、スポーツ紙記者の中山は、向井と真田の確執に疑念を覚え、調査を開始する。一方、フリーライターの大八木は、信光学園と向井率いる習志野西高校が、打順が1周する3回から突如として打撃爆発という傾向を見つけ、不正のにおいを嗅ぎ取る…。
この作品を引っ張るのは2つの謎。相手の投球を見極めて、100%近く打ちこんでしまう謎。そして、密室殺人の謎。後者に関しては、ミステリ小説のお約束であるが、前者の方法についてがとかく興味深く感じられた。
そして、明らかになった真実。これが描かれたのは1988年だが、現在でも言われている「高校野球のセミプロ化」に挑戦しようとした二人の若者。そこから生じたすれ違い。そして、それが招いてしまった事件…。途中まではただの「悪役」としか思えなかった男が秘めたもの。以前読んだ、『魔球』(東野圭吾著)同様に、実に「熱い」物語に仕上がっている。
正直、「100%打つ」方法に関して、科学的に実施できるのかどうか? という疑問はやはり残る。そして、もう一つ。密室の方もちょっと苦しいかな? という感じはする。そういう意味では欠点かな? とは思う。ただ、2つの謎で引っ張って、最後に明らかになる「思い」の熱さの印象は強い。十分に楽しめた。