天王寺大原作、渡辺みちお画『白竜 21』(日本文芸社、2008年)はヤクザ漫画の完結編である。ヤクザ物のメインは組織同士の抗争であるが、『白竜』は大企業などを相手にしたヤクザのシノギをメインとした点に特異性がある。最後を飾るストーリーは国営鉄道の都内の一等地の払い下げを巡る入札戦である。
民営化の名の下に国民の共有財産が企業の食い物にされている実態が浮かび上がる。官僚も接待や天下りによって甘い汁を吸っている。民営化という響きは美しいが、英語ではprivatizationであり、私物化とでも訳した方が実態に即している。
この民営化の実態を明らかにしたものが郵政民営化に伴う「かんぽの宿」疑惑である。たとえば東急リバブルは旧日本郵政公社から評価額1000円で取得した沖縄東風平(こちんだ)レクセンターを学校法人・尚学学園(那覇市)に4900万円で転売した。東急リバブルは濡れ手で粟の暴利を得たことになる(林田力「日本郵政ガバナンス問題調査専門委員会報告書公表」PJニュース2010年5月24日)。
この「かんぽの宿」疑惑が明らかになる以前に民営化によって企業が甘い汁を吸う実態を明らかにした点に『白竜』の先進性がある。後継の『白竜LEGEND』では八百長相撲や原発事故など現実に起きる事件を予見することで話題になっている(林田力「『白竜LEGEND』第17巻、原発だけでなく大相撲の八百長も予見」リアルライブ2011年4月11日)。