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20 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
安吾の生き方。,
By テツオ (群馬県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 白痴 (新潮文庫) (文庫)
白痴を含む七編一、「いずこへ」 一人称で語られる物語の初めに、安吾の人生哲学が書かれている。 落伍者の心情「何か一つの純潔とその貞節を守らずには生きていけられなくなるものだ。」「私はみすぼらしさが嫌いで、食べて生きているだけというような意識が何より我慢できない」「私は少年時代から落伍者が好きであった。」 自分をとことんまで貶めて、そこから観た真実をそのまま書き出す。これが安吾の芸術だ。絶望的な状況をそのまま受け入れるということ。このことが絶望的な状況から彼らを救っている。自らの絶望をしらけた視点で語ることによって絶望がユーモアに変わる。まさしく安吾は自らが『堕落論』で言ったとおり自分を貶め、道化になっている。世の中をプラグマティックにみていながらも、俗な人間の生の中に美のイデアを求めた芸術家である。
18 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
「堕落論」の著者らしい作品集,
By 唐沢 大 (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 白痴 (新潮文庫) (文庫)
坂口安吾の小説は基本的に暗い。たとえば、最初の短編「いずこへ」の書き出しはこんな感じである。<私はそのころ耳を澄ますようにして生きていた。もっともそれは注意を集中しているという意味ではないので、あべこべに、考える気力というものがなくなったので、耳を澄ましていたのであった。> 無気力で厭世的である。暗い。 もちろん、「考える気力」がなければ、こんな知的な文章を紡ぎだせるはずがないので、正確にこの状況を描写するならば、「何も考えたくない」という方が適切だろう。坂口安吾が生きた時代というのは、そんな息苦しい時代だったかもしれない。彼は1906年生まれ(生誕100周年で去年からたくさん本が出ているらしい)で、戦前に青年期を過ごし、戦中に壮年期を過ごし、戦後日本が明るくなっていく前に没した。ちなみにこの作品群は、戦後間もなく、日本がまだ荒土だった頃のものである。 で、作品に戻ると、何も考えたくないときに人間が何を考えるか、ということがこれらの作品群に描かれているとぼくは感じる。人間、なぜかは分からないが、何も考えないでいるということは非常に難しい。実際不可能である。煩悩とはほとんどあらゆる思考のことであるが、煩悩を捨てることがいかに難しいかは熱心な仏教徒でなくても分かる。 さて、思考を放棄したいときに人間はどうなるかというと、「思考を放棄するというのはどういうことか」ということを考えるようになる。そういう閉塞、逃げ道のなさを坂口は描いているように見える。「デカダン」とはそういう後退的なループに知的リソースを投入(浪費)することではないかと思う。表題作の「白痴」は象徴的で、「白痴」とは(象徴的に)何も考えない人を意味していて、作品内では語り手は白痴の女を侮蔑的に語るけれども、そこに裏返しの羨望を読み取ることはたやすい。 ということで、なんだか行き着くところのないどんよりとした思索を楽しめる人にはお薦めである。(要はあんまり今風じゃないのね)。
6 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
心地よいグダグダぶり,
By テキーラサンライズ (hyogo) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 白痴 (新潮文庫) (文庫)
全編にわたって気だるく薄暗い雰囲気が漂い、どこかしらネチネチとしてグダグダで陰湿な展開ぶりである。ゆえに思わず苦笑してしまった場面もあったが、読後にそれが不快という感情を呼び起こすことはなかった。むしろ今までにないフワリとした不思議な感覚を得た。ぼんやりと心地よささえ感じた。「私は始めから不幸や苦しみを探すのだ。もう、幸福など希わない」 「幸福などというものは、人の心を真実なぐさめてくれるものではない」 「私はただ、私の魂が何物によっても満ちたることがないことを確信した」 などと、印象的な文が散見される。 「続堕落論」には、文学は制度や政治への反逆と復讐であり、反逆と復讐自体が協力なのだと述べられているが、確かに「幸福を追求し何事にも前向きに積極的に生きよう、前進し続けよう」という現代社会のスローガンに対して、この小説は強烈なカウンターパンチを浴びせる代物だ。しかし、それを浴びせることもまた協力への一歩。むしろこの小説の側の方が生きている人間の真実なのかも知れないと思った。
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