2010年に生誕100年を迎えたためでしょうか、近年富に白洲正子の功績や文章が再評価されていると感じています。高度成長の真っただ中の頃、このような日本古来の伝統美について見識高く記した正子ですが、その審美眼は時代を超えて伝わってくるのでしょう。
本書は彼女が愛した京都・近江・若狭・信州・美濃にある十一面観音を取り上げ、その文を引用しながら、豊富な美しい写真で紹介したムックでした。
白洲正子の文の美しさは定評がありますが、冒頭の一文を記した孫の白洲信哉氏の格調高い「細部に宿る日本の神」にもひかれました。これは読む値打のある文章だと高く評価しました。母方の祖父が文筆家の小林秀雄ですからまさしく華麗なる一族です。
本書の内容です。
細部に宿る日本の神 白洲信哉
巡礼その一 近江 湖北
向源寺 村人がお守りしてきた貞観彫刻の白眉
石道寺 子授け観音としての信仰も厚い、古様で美しい藤原仏
己高閣・世代閣 かつて隆盛を誇った大寺の仏像群を収蔵する
大平観音堂 村人とともに山を降りた仏師・円空の傑作
巡礼その二 近江 湖南
盛安寺 大津京ゆかりの美しい観音像を伝える
檪野寺 かくれ里にある平安時代一木彫仏の宝庫
巡礼その三 若狭
多田寺 多田ヶ岳の山岳信仰に育まれた古刹
羽賀寺 「御食国」にちりばめられた珠玉の古寺
巡礼その四 京都
月輪寺 愛宕山中に建つ空也上人ゆかりの寺
禅定寺 宇治田原の古刹の心和むたたずまい
巡礼その五 信州
智識寺 姥捨山の麓を巡り、古い信仰に思いを馳せる
大法寺 見返りの塔と観音像が、いにしえの道を見下ろす
巡礼その六 美濃
清水寺 美濃の地におよんだ「清水の流れ」
美江寺 観音像の故地を訪ね、栄華を偲ぶ
日吉神社 神仏習合の名残りを漂わせる古社
essay
仏像ガール 感動することで、変わることがある
福森雅武 白洲正子の胸裡
column
1 近江路に、石を訪ねて
2 別所温泉・塩田平の古社寺を巡る
白洲正子 仏像セレクション30
文=青柳恵介 イラスト=川口澄子
十一面観音の名著 和辻哲郎からみうらじゅんまで
白洲正子が愛した十一面観音MAP