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18 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
筆者の思い入れをどう受け止めるか,
By 銀鼠 - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 白川静 漢字の世界観 (平凡社新書) (新書)
前半は白川文字学(東洋学)についての素晴らしい解説。編集工学を提唱する筆者の方法論が白川静という複雑・巨大な現実のテキストを得て、見事な意味空間を創造することに成功しています。鳥瞰図的な視点というより、「章立て」を行い、概念に「インデックス」をふることで、白川静というテキストを初めて読む人が迷わないための配慮がなされています。白川作品の読者には理解したつもりの概念の整理にも有効です。 漢字が記憶している呪術世界から哲学的転回点を代表する孔子に至る通時的な移動。漢字文化圏にまたがる歌謡「詩経」と「万葉」を複眼的に読むという共時的な広がり。「漢字文化圏」という時空間を自由に移動する術を提示してくれた白川静という知の巨人の業績が松岡氏のおかげで、一般読者の理解の地平まで降りてくる結果となりました。 後半は失速気味。折口信夫や柳田国男、歌謡についての筆者の思い入れが強すぎ、対象とする読者を狭める結果となっているように思えます。 例えば「日本は歌によって国語を作ったのでした」と筆者は述べます。残念ながら新書の紙幅では不足する巨大なテーマではないでしょうか?当然論証も出来ず、最後までこの論調で日本文化が語られるのですが、前半の出来が素晴らしいだけにマイナス2の評価とさせていただきました。 ただし、情報量の多さは新書にしては出色であり。様々な示唆を受けました。例えば、内藤湖南から始まる京都大学シナ学の伝統を受け継がれている吉川幸次郎先生、一方、白川先生も内藤湖南へ私淑されているという対比。 現在講談社学術文庫(初出講談社現代新書)に収められている「学問の世界」の貝塚茂樹先生の章と本書の1章から3章に記述される白川先生の壮年期を比較すれば同じ京都という場所で、中国研究において、全く違った学究のスタイルが営まれていたことに気づかされました。 また、「興」という概念を理解せずに「初期万葉論」「後期万葉論」を読んでいたことを気づかせてくれた本書に感謝しています。
30 人中、27人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
白川静学への入門,
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レビュー対象商品: 白川静 漢字の世界観 (平凡社新書) (新書)
今までありそうでなかった白川静についての単著。比類なき知の巨人の生涯と人となりをみていき、その壮大な学問体系の意義を考える。漢字が目くらまんばかりの中国文明の象徴であることは十二分に論じられているが、白川氏は、その呪術性を見出し、古代中国の素朴な息吹や、それをたくましく取り込んだ古代日本人の精神に鋭く切り込んだ。 その手法は厳密に普通の意味での合理主義や実証主義とは相いれない部分があり、批判を招いた部分もあったが、その形式的な理性・実証主義を乗り越えた研究の評価については、ようやく最近では学界の多くも彼に追いついたと言えよう。 白川氏は日本文化を「文字遊ぶ」文化であり、「あはれ」「おかしさ」を重んじたとする。万葉仮名から続くその伝統は、今日ではギャル文字、ネットスラング、アスキーアートなどに脈々と受け継がれている。氏は晩年もニンテンドーDSに興じていたというから、常に最新の文化にたくましく対応していたわけだ。 しかしながら、また一転して今日の漢字や文字、ことばをないがしろにした風潮も気にかかる。一度来歴をかえりみるのも決して悪いことではあるまい。
53 人中、44人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
白川静の見事な鳥瞰図,
By Alice in Tokyo (南青山) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 白川静 漢字の世界観 (平凡社新書) (新書)
白川静の人生、学業と思想を鳥瞰した見事な本がある。ジャケットの裏に、「博覧強記の著者が”巨知”白川静に挑み、その見取り図を示した初の入門書」と書かれているが、著者の永年にわたる白川静に対する傾倒の中にかもされた、敬意と愛情の表現のように見え、読んでいて気持ちがよかった。 博覧強記の人が、殆ど自分の薀蓄をひらかさず、白川静の考えを、白川静の文章を基に、しかも分りやすく紹介している。凄い力量と言うほかはない。一気に読ませる。 白川静の漢字学は、文字の本源へ遡るスリリングな探検で、思いもかけないところへ我々を導くのだが、多くの場合、呪術的な古代世界で、おどろおどろしい感じさえ受けることがあるが、中々全体像が描けない。白川静の60歳の時だされた、最初の一般書、岩波新書『漢字』も内容が濃すぎて、読むのに時間がかかった。『孔子伝』や『初期万葉集』といったものが、白川静の全体の中にどう位置づけられているのか?70歳を越してから編まれた『字統』『字訓』『字通』は我々に何を残そうとしているのか?私はどこか深山に入ったようで、どこかぼんやりして、霧がかかっていたが、本書で霧が晴れて、白川静山脈が見通ことが出来るようになった。 私は先生の謦咳に触れたことがある。今から40年ほど前、白鶴美術館の講堂で漢字の講義をしておられた席に、1度か2度か出席した。先生50歳半ばであったと思われる。甲骨文字をガリ刷りした資料で、話の中身は殆ど分らず、目玉がぎょろりとした悪相のみが記憶に残った。 藤堂保明の漢字学に興味を持って、その後、白川静の本に出会うことになる。いい加減な読者であったが、今回の松岡正剛氏の『白川静』よって再びぐんと身近になった。 本の紹介はかえって混乱を招くのでしない。白川静ファンは読んでください。
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