白川静先生の本はいくつも持っていますが、本書は白川漢字学への、もっともわかりやすい入門編だと思いました。字の好きな子なら小学生でも読めるし、中高生にはぜひぜひ一度は手にとって、拾い読みでいいから親しんでほしい本です。『常用字解』などをもっているオトナには別に必要ないともいえますが、かわいい挿絵を楽しみ、何より通読することができるのが大きな利点。損はありません。いくつも心に残る説明があります。たとえば「伏」は、地中の悪霊を祓うために王墓に武人ひとりと犬一匹を埋めたことを表わす。「示」は神を祭るテーブルで、それに稲妻のジグザグの「申」がつくと神。なるほど、それで雨が降っているときの稲妻の姿が「電」なのか。あるいは「北」とは人ふたりが背中合わせになった姿で、そこから「そむく」の意味が生まれる。「敗北」は、要するに「敵に背中を見せる」こと、別に北に逃げるわけでもなさそうです。驚き、驚き、驚き。寒い晩に、ゆっくりお湯につかりながら通読できる程度の長さの本ですが、これを読むと読まないとでは、文字に対する感覚がまるで異なるということになるでしょう。おすすめです。