白川静は漢字が生まれた中国でも尊敬される、日本が誇る漢字学の世界最高の権威である。漢字の裏に広がる「意味の宇宙」を一度でも、覗き込んだ人はその魅力に取り憑かれる。
この本を本屋で立ち読みをして、驚いたことがある。まず、百の2字熟語が見開き2ページでぴったり解説されている。次に、全ページ2色刷りなのだが、百の熟語の見出しの漢字が2色であるだけではない。本文を読んでいて、左右にある古代文字や旧字を参照するときに「赤の色」が使われている。漢字の意味を知るには覚えておいたほうがよい「文句」は太字となっており、3色刷りの効果がある。
これまで白川静の漢字学の関連書をいくつか読んできたが、おそらくこの本はその入門書として最高の位置にランクされるのではあるまいか。
漢字はバラバラにできたものではない。ひとつの漢字から次々と広がる文字系列として「網の目」のようにつながっていく。なぜ百の熟語が選ばれたのか。白川静の漢字学を学ぶ上でふさわしい熟語をまず上げ、そこから文字系列へ導くためにほかならない。たとえば、「夭折」という見出しでは、「夭」が若い巫女が身体をくねらせながら、踊る姿であると解き明かした後、「夭」の関連字として「笑」が神への祈りでエクスタシー状態になって、踊る巫女の姿であることが紹介される。だから「妖」は神が憑い女なので「あやしい魅力」をもつので、「妖艶」とか「妖美」という意味がでてくる。「夭折」の「折」も神と関係する文字で、草木を「斤(おの)」で切ることから来たのだが、なぜ切るかというと「神への誓い」のため。「誓い」に「折」の文字が入っているのは、そのため…といった具合である。
まずは、書店でご覧あれ。そういえば、「2010年」は白川静さん「生誕100周年」とか。