あの警視庁公安部の倉島警部補が返ってきた。
倉島は、再び元KGBの殺し屋ヴィクトルが、本名で入国してきた、と知らされる。ヴィクトルは思い通りの仕事をして出国した。あとに残されたのは、外務官僚の不自然な死だった。
今回の倉島には、腰の定まらない態度は微塵もない。前作の事件を経て、「公安部の警察官として覚醒」していた。紆余曲折を経て、倉島はモスクワに飛ぶことになる。
前作に引き続き登場する、倉島、ヴィクトルの魅力もさることながら、圧倒的に存在感を示しているのはロシア人貿易商のペデルスキーである。ヴィクトルをボディーガードとしたペデルスキーの素顔が徐々に明らかになっていくプロセスには、惹きこまれるものがある。エレーナも強い印象が残る。ただし、終結部の事態には唖然(?)とした。
総てが明らかになった後、では、事態はどのように収拾されるのか、という方向に、関心が移っていく。そこで下された倉島の決断こそ、彼が成長し、一人前以上の仕事ができるようになったことを証しするものに違いない。
前作の読了後は、それなりの作品とは思っても、人に薦めるほどのものとは思わなかった。だが、本作は大いに薦めたい。作品の世界の幅が格段に広くなっている。多分ペデルスキーの存在が、この作品に単なるエンターテインメントに終わらせない何かを付け加えているのだろう。とはいえ、決して、堅苦しいものになっているわけではない。より愉しめる内容になっているということだ。