ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」で極悪人扱いされた、
鯨漁の拠点・和歌山県太地町――。
シーシェパードの隠し撮りを防ぐため、
最後に鯨にとどめを刺すところをシートで覆っているが、
それでもシーシェパードは隠しカメラなどで撮影し、
インターネットで世界に流す。
シーシェパードに「恥知らず!」と罵られても、
「この野郎!」と怒ると、その部分だけが世界に流れるため、
じっと耐える漁民の人々。
一方で、フェロー島では堂々と鯨、イルカ漁が行なわれ、
入り江が血で真っ赤に染まるシーンも、開けっぴろげだ。
本書の冒頭カラーの、その場面は、大地町との大きな落差を感じる。
5月半ば、NHKスペシャルで太地町が取り上げられた。
漁師たちは「我慢や、怒ったらあいつらの思うつぼや」と言う。
しかし漁師の、中学生の娘さんが、
「文化の違いを論点にしたら、いかん!
あの人たちは、鯨が賢くて文化があるから殺すなと言うてる。
だったら、頭の悪い牛や豚はええの? と言うべきや。
同じ命、頭のいい悪いは関係ないでしょ」
……そう言っていたのが印象的だった。
大地町役場、日本政府の弱腰が、漁民たちに「我慢」を強いているのかもしれない。
読後、「その通りだ!」と思いつつも、
日本側の余りの受け身の姿勢にい歯がゆさを覚える一冊でもあった。