8篇のどの作品にも“色”がさあっと刷かれたような印象を受けた。タイトルの5篇までに色を冠しているのもそう感じる理由かもしれない。
さまざまな愛の形が彩られている。脳裏にフラッシュバックする過去の恋、子供を産んで夫との距離感にとまどう妻、恋に疲れて人生も望みも半ば諦めて巡り会った人と静かに暮らそうと決めたはずの女、子供を授かることができない夫婦の間の齟齬等々……。
今ある暮らし、今ともに暮らす相手などに、ふと違和感を覚えてしまい心がふうっとフェイドアウトしていく。細やかな心理描写が、女の内面を丁寧に浮き上がらせている。
各篇とも30代半ばの女たち、夫婦が主人公であるせいか、全体として浮き立つような華やかさはない。失態も苦渋も味わってきた人が知る諦観や、自分と相手を明日へ繋ぐための妥協を、飼いならしているといった塩梅だ。
それでも、なぜか淀んだような印象は受けない。恋、愛、不倫、離婚、出産、堕胎、いろいろなシーンが描かれているのだが、各篇の女性たちが生きることに触れ得ているからこそだろうと思う。
蘇ってくる思いに囚われたり、今在る場所を見失いそうになったり、相手より自分がかわいい一瞬があったり、そういった誰しもにある心のブレをうまくすくい取っているのだ。 まっすぐに迷いなく生きていける人には必要のない物語であるだろう。
でも、小さな失敗、小さな後悔、小さな決意をさざ波のように繰り返しながら日を重ねている者には、ちょっと雨宿りといった体の作品集だった。
最後の「蒼い水」がいちばん好き。