イングリッド・バーグマンは40年代に立て続けに3本ヒッチコック映画のヒロインをつとめており、本作はその第1作目。
ヒッチコック映画のヒロインは追い詰められた土壇場で危機を回避、(少なくとも話の前半は)ヒーローと対立する謎の女、またはヒーローのサポートというパターンの何れかであることが多い。しかし、本作のバーグマンは、グレゴリー・ペックが記憶を喪失して自分を見失い混乱しているという設定なので、医者として、そして恋愛感情から、彼を救うために自律的に行動して謎を解くという役柄。初めのうちは男に興味がない理系・眼鏡女子で、同僚からセクハラ的からかいを受けていたのが、出会った瞬間に恋に落ちて、凛々しく、かつ美しさが画面から匂い立つ女にみるみる変身する様に惚れ惚れする。
謎説きの重要な部分を夢の分析で行うため、夢の内容がプロットから逆算したものになっているのはいくら製作当時でも単純すぎると思う。また夢の場面をダリがデザインしているが、あまりインパクトはない。スキー滑走シーンの撮影は現代の眼で観ると物足りない。しかし、45年公開の映画であり、バーグマンがこれだけ美しく、凛々しければ、物足りない諸点は我慢すべきだろう。
ラストのピストルを使ったシーンは見物。黒澤監督の天国と地獄の有名シーンに影響を与えたかもしれない一瞬があります。