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財前の権力へのこだわりはすさまじいと驚異を覚えるが現にこのような感覚で生きている人間は現代も実存するのではないか、と社会のあらゆる場面を思い起こせばそれこそまたリアルな苦々しさがよみがえる。
財前の同期の里見医師は真実を追求し、誠意を尽くす理想的な医師であり、皮肉にも財前がいたからこそ、里見の理想的な医師像はきわ立っていたのかもしれない。いや、いなければいけなかった存在だ。
新潮文庫第1から5巻のうち、この5巻は分厚さは他の巻と勝るにもおとらないが、最も薄く思えた厚さだった。ラストの場面は一生忘れそうもない。荘厳さがあり、しみじみと人間の混沌とした世界を思った。
何より、登場人物の本当の姿が良く見えるのが、
5巻の最後だと思います。
財前、里見、東、ケイ子、又一、
彼らの「本当の気持ち」をラストの場面が
鮮明に映し出してくれています。
社会的な反響を考慮し、
膨大な量の取材、研究をして書き上げられたこの小説は
そのスケールの大きさとともに、
感動を与えてくれます。
最後に、
財前とは全く違う性格の人間だと思う自分が
1巻から読み進めていくにつれて、
財前に共感したことに驚きました。
手塚治虫のマンガ「ブラックジャック」が、医学博士である作者故のリアルな表現で、医学教育上も十分役立つと言うような指摘を読んだことがあるが、それに先んじて活字で具現化しているのが本作品だといえるのではないだろうか。開腹して取り出した臓器を手に取り、触診したうえで病巣を確認し摘除する場面を読んでいると、あまりのリアルさに感嘆するばかりだった。
作者は作家専業になるまでは新聞社勤務で、あの井上靖の元で取材や文章に対して研鑽を積んだそうである。そのときの経験が徹底した取材を行って、事実を正確に伝える姿勢を育んだのであろうことは間違いない。
作品としては十二分に有名であり、二度にわたるTVドラマ化で話題にもなっている。劇画的ともいえる人物描写と、テーマの重さ、それを書ききる力強さを感じさせる作品だ。大きく前編と後編に分かれるが、いずれも緩急をつけた描写が印象的だ。前半の教授選挙や、後半の法廷での応酬シーンなど、たたみかけるような手に汗を握るクライマックスを味わうことができる。
最終章、財前の迎えた結末と、それに対する財前の客観的な手紙、そして里見の台詞には思わず涙してしまった。
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