細菌兵器の開発に携わる若き生物学者の死の真相をその友人が探り当てるまでの過程がドラマティックに描き出されたものです。
帚木氏の作品らしく、この作品も緻密で豊かな情景・人物描写とよく練りこまれた構成が光ります。
細胞生物学という素人には敷居の高い題材をストーリーの主軸に巧みに取り入れているのは秀逸。
科学・技術と人間社会の関係性、人類に災禍をもたらす「逆立ちした」科学に従事せざるを得ない科学者の苦悩、人との関わりを怖れていた男の頑なな心の殻が友人や恋人によって解きほぐされていく様子などとても読みどころの多い作品だと思います。
読後感はすがすがしい印象。雨後の青空の下にいるような清々しい気分になることができます。とても面白い。