発達障害についての知識が全く一般的ではなかった20年前から、発達障害を持つ若者たちに関わってこられた著者の、実体験に基づく著作です。
教育の中でも、非常に難しい分野(しかも、公教育の枠組みの外側で)に取り組んでこられた方々に敬意を表します。
子どもが障害を持っているので、
「この子がなんとか将来社会的に自立できるように育てなくては」
思いながら日々すごしているのですが、
示唆に富む記述が随所にありました。
たとえば、
・合宿授業も(・・・)ゆったりと時間をとって生徒にとっても講師にとってもあまり負担にならないようなスケジュールを組むようになりました。(p53)
・誠実さに裏付けられた情熱というものは、無論、教育などという「大それたもの」に立ち向かう場合、それがなければ話にもなりませんが、ある意味、やっかいなもので、ときとして客観的な判断を失わせる側面もあります。ことに障害児教育にかける情熱というものは、ゴールが見えにくく、達成感が得にくいものですから、「情熱」が先走り、空回りし、結果、子どもたちを窮屈にさせることもあるように思います。(p54)
・私はこれまでの授業経験から、こうした難しさ(=学習障害)を抱える生徒たちに「基礎的なことをていねいに指導していけば必ず理解を得られる」といった楽観を、残念ながらすでに持っていません。(p75)
特に最後の部分は、漠然とはわかっていたものの、文字にして目にすると、「やっぱり」とも思えます。
「そういう困難を抱えた人間が世の中にはいる」
ということがもっと広く知られ、
彼らが「バカ」と言われる場面が減っていくことを願います。
実体験に基づく言葉の重みが随所に感じられ、
子育ての先を見通す上でも有益な本でした。