発達障害の問題の本質を‘主体のなさ’として見ていくという試みで、幼児から成人(老年期までも含む)の発達障害の実際のケースへのアプローチから、時代精神としての発達障害という論考まで、実践的かつ理論的な論文が紹介されている。心理療法に携わっている者としては、日頃から、確かに感じてはいたけれども、なかなか言葉にしにくかったことがすっきりと理論的に書かれている!という印象を持ち、大変心強く思った。
‘主体のない’発達障害のクライエントとの関わりでは、主体や内面を前提とした従来の心理療法的アプローチは通用しないが、‘主体が立ち上がる瞬間に立ち会う’ことや‘内面が成立する瞬間(内/外の境界ができる)’自体を目指す新たなアプローチが、具体的にいくつか提案されている。あえて発達障害傾向のクライエントをターゲットとした心理療法を志そうとしなくとも、どんな心理臨床現場でも発達障害のクライエントと関わらないということはありえないご時世なので、心理療法に携わろうと思う人ならば一読の価値があると思う。