その道では最先端を行く学者先生から、
初心者が「入門」の教えを請うことが果たして適切かどうかは
議論の別れるところだろう。
本当にその道を極めた人であればその道の「真理」に近づいているはずで、
初心者こそその真理に触れたほうが良いと言う意見もあれば、
初心者には難しい事柄も「あたりまえ」と説明を省いてしまい、
内容が高度になりすぎて初心者に適さないと言う意見もある。
残念ながら、世の中の実態は後者が圧倒的に多いのではないか。
この本は、まさにコンピュータの世界で最先端の学者が
まったくの素人向けにコンピュータ入門書を書いた試みだ。
その試みは驚くほどの成功を収め、
これ以上ないほど判り易い内容になっている。
著者の才能に改めて感服してしまった。
もちろん、判り易いだけではない。
いささか軽い感じを受けるタイトルとは裏腹に、
コンピュータの原理から、さらにその理論的背景の情報学にいたるまで、
実に真面目に重要なポイントをカバーして解説している。
難しい理論に関しては、興味部会「例え話」が満載で、
読者をまったく飽きさせない。
読者の対象はむしろ「コンピュータを専門にしない人」だろう。
そのような人たちの入門書として、これ以上のものはないと断言できる。
なぜコンピュータの専門でない人が、
コンピュータ入門書を読むことを勧めるのか?
それは本書の中にあるワインの例え話で説明するのが良い。
ワインを飲んで楽しむのはワインの知識がなくても誰でもできる。
だが、ワインの分類、製法、歴史、産地などの知識があったら、
さらにワインを飲む楽しみが増すのではないか。
誰でもコンピュータと付き合わざるをえない現代社会、
どうせなら楽しんで付き合えると良い。