「授かる」の内容を一言で表すなら「発生から誕生まで」である。しかしその発生から誕生までが今の社会でいかに難しいかを最先端の現場で30年以上携わり、研究して来た医師が解りやすく語っている。読み出したら、瞬く間にその膨大な知識と経験に裏打ちされた語りにぐいぐいと引き込まれてしまうのだが、人柄であろう、その患者に向けるまなざしがやさしく、口調がとても丁寧で温かである。著者自らが生殖医療技術の進歩に驚き、患者を前にしてそれをどこまで適応して良いのか戸惑い、つらい結果をどう患者に告知したらいいのか思案し、良い結果が出た時には患者とともに喜び、生命の存在、誕生に感動し、その貴重な瞬間に立ち会える幸せを語り、何度出産に立ち会ってもその感動は色あせないと言い、そこから力を与えられ、元気づけられ、励まされ、助けられ、本当に幸せな職業だと繰り返し語っている。生命と真摯に対峙する篤実な人柄が浮び上がってくる。著者も言っているが、不妊治療中でつらい思いをしている人、治療を始めようかためらっている人には勿論読んで欲しい本だが、今、生命の始まりで従来の生命観をくつがえすほどの現象がおきている事を私たちはこのまま傍観していてはいけないのではなかろうか、故に、一人でも多くの人に読んでもらいたい本である。